2011年5月6日金曜日

夢トラック劇場「セロ弾きのゴーシュ」旅日記

真田鰯です。

4月29日から5月5日にかけて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン主催の、夢ト
ラック劇場「セロ弾きのゴーシュ」に行ってきました。

今日は、鰯旅日記形式でご報告します。


●4月29日(金・祝) 岩手県釜石市 釜石市民体育館前ひろば

AM 6:00 仙台駅前集合。セーブ・ザ・チルドレンの車に先導され出発。
途中のSAでなぜか西塔亜利夫さんに会い、皆で「いってきます」を言う。

内陸を通ったため、この日は津波で被災した場所を見ずに会場まで行くことになる。

AM 11:00 頃会場着。桜の咲いている広場で、会場設営。
トラックの中に、掃いても掃いても桜が舞い込んでくる。
うららか。ここ数年でもっともうららかな一日と感じる。
裏山の木が風に揺れて、まるで山全体が生きているみたいに見える。
賢治が描いた世界が岩手にはまだある。

PM 1:00 イベント開始。子どもが集まってくる。続々集まってくる。
日和もあってとても被災地とは思えない。今ここが被災地だとわかる理由は、た
くさんの大人が、次から次へ子どもたちにプレゼントを無償で与えてい ることだ。
PM 2:00 劇上演開始。子どもたちは楽しそうに見ている。ライヒの演じる猫
がトラックから飛び降りると、子どもたちはその場で配られたお菓 子をライヒ
に次から次へとあたえ始める。

上演終了後NHKの取材を受け、バラし、宿へ移動。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン遠野事務所として借りたが、まだ一度も使っ
ていない家、というのが宿。
いかにも「遠野」という感じの、座敷わらしが出そうな古民家。
ジンギスカンを食べ、ビールを飲み就寝。


●4月30日(土) 岩手県山田町 山田町立山田南小学校校庭

遠野から山を越え、海沿いに出る。
とたんに「ああ、これが現実だったな」と思い出す。
胸が詰まって身体が硬くなる。
車内の空気が急に変わって、皆無口になる。嘆息のような言葉だけになる。会話
じゃない。
セロ弾きのゴーシュを上演する理由は、「心を動かして自由に、のびのび表現し
ていいんだよ」というメッセージを伝えることにあると思っていたが、 この光
景を見て心が硬くなることに理由なんてない。圧倒的に不条理だし、圧倒的に非
常事態なのだ。心も身体も、構えるし緊張する。

山田町は火災もあったらしい。焼け焦げた家々は空襲のあとのよう。崩れ、焼け
て住めなくなった家のひとつひとつに「O.K」と書かれている。

風が強く雨が降り出しそうだったが、何とか終演まで持ちこたえ遠野に戻る。

宿にガスが通っていたので、鍋を買って、ひっつみをつくって食べる。写真は食
べたことないひっつみをつくる若人たち。
ひっつみをつくりながら、わけのわからない多幸感に襲われる。こんなさもない
幸せのために自分は演劇を選んでやっていたことに気づく。
SCJの宿管理人のまんちゃんと、トラック運転手のさいとうさんを交え、日付変
わるまでのむ。


●5月1日(日) 岩手県陸前高田市 サンビレッジ高田

大きなテントのようなドーム型の建物の中に、たくさんのテントが張られてい
る。プライバシーを守るための配慮なのだろうが、はじめて見たので、少 し驚く。

サンビレッジ高田の子どもたちは、すごく劇に参加してくる。役者がはいたせり
ふに、共感したり、違うと思ったり、心で思ったことを全部言葉にして 客席か
ら投げかけてくる。
子どもの一人は見ながらどんどん近づいてきて、もう舞台に上りそうになってい
る。でも、他の子どもたちはそれをとがめるでもなく、普通に見てい る。たぶ
ん他の子も見ている姿勢とか心持ちが同じだから、気にならないのだろう。最初
と最後で、子どもに参加してもらうシーンがあるが、2回とも 舞台に上ってきて
くれた。


●5月3日(火・祝) 宮城県名取市 ファミリーマート名取植松1丁目店・駐車場

たくさんの演劇関係者が、子どもを連れたり連れなかったりして、駆けつけてく
れた。

不思議な虹が出た。何を見ても地震の前兆に見える。

コンビニの駐車場でも公演ができるというのは、今までの発想に無かったこと
だった。

リハーサルを見ていた子どもに「さっきのあれやって」とせがまれる。おもしろ
いと思うと何度でも見たいものらしい。「本番でな」と軽く受け流す会 話をし
ていたつもりが、すぐにターゲットされ絡まれることとなる。
タバコを吸っていたら、「200円ちょうだい」とたかられる。
しかも私のちん○を握りながら。
「ひとにものをお願いするときに、ち○こを握ってはいけないよ」という大切な
教えを伝える。
今後の人生で活かしていってほしいと思う。

この日見に来ていた友人の子どもは、翌日、「今日もあれみたい」とせがんだら
しい。おもしろいと思うと何度でも見たいものらしい。


●5月4日(水・祝) 宮城県東松島市 ロックタウン矢本

渋滞が予想されていたが、とてもスムーズに流れ、10時前には会場に到着してし
まう。

ARC>T代表の樋渡さんが激励にお見えになる。

お昼は、敷地内にあるケンタッキーをテイクアウトして食べる。GWっぽい。

敷地内のトイザラスでは親子がおもちゃを買いにきている。ワーナーマイカルシ
ネマズ新石巻も復活したらしい。子どもの娯楽が戻りつつある。

上演終了後、大人の方に「とても感動しました」とお声をかけていただく。
みな心から楽しめる何か、楽しんでもいい何かを求めているんだと思う。
一人ではなく、たくさんの人が一緒に見ることで、「楽しんでもいい場」が生ま
れるのだと思う。


●5月5日(木・祝) 宮城県石巻市 石巻市立大街道小学校校庭

恐怖の大街道小学校。
私は、3週間近くこの学校に「こどもひろば」のために通っていたため、鰯の顔
を見るだけでアドレナリンが出まくる子どもがたくさんいる。
ほんとにこんなとこで上演できるのだろうか、という不安と、2週間近く会えな
かった子どもたちに会える期待とでいっぱいになる。

が、会って早々、追い掛け回され、首に下げていたイヤホンを引きちぎられる。
とても残念な気持ちになる。

12:30頃、女優の新垣結衣さんがSCJのボランティアとしてお見えになる。
「普通にしていてください」と広報担当の方に言われたので、仕方なく遠巻きに
眺める。
子どもたちに混ざって一緒に椅子作りをしていたが、子どもたちは気づかないの
か、すごく普通にしている。
途中から気づいた親たちが色めきたって、一緒に写真を撮ったりしていた。
一番の支援は、足を運ぶこと、一緒の時間を共有することだなとつくづく思う。

大街道の子どもたちは、他のどこよりも真剣に見てくれていた。
野外なのにひとりひとりの息遣いがきこえるような集中した客席だった。

上演終了後、こどもひろばでずっと遊んでいた大街道の暴れん坊将軍(小学2年
生)に会う。
はにかみながら、すごく嬉しそうにしている。
地震後、自分にとって一番大事な友達のひとりだったので、私もすごく嬉しくなる。

人と関わる度に、自分とって大事な人が増えていく。
まして、非力で、困難を抱えていて、闘っている子どもは、すぐに大事なひとだ。
ただ、今生きている理由も、舞台上で闘う理由も、自分にとって大事な人のため
でしかない。
だから、外へ出ていって関わるより他に道はないのだろうと思う。


真田鰯

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