2012年1月8日日曜日

あるくとサロンに参加して

あるくと年末企画「来て、見て、あるくと。」 では、 あるくとの活動報告の場としてサロンが毎日行われました。

私が参加した3日目の1226日には、「クリエーションを通して繋がっていく」というお題で、盛岡の「架空の劇団」代表のくらもちひろゆきさん、仙台の劇団TheatreGroupOCT/PASS”主宰の石川裕人さん、東京の女優、千賀ゆう子さんの3人をゲストに迎え、トークセッションが行われました。

311日の震災時どんな経験をしていたのか、という話で、3人ともが別々の場所で、「震災」の体験をしていたということが語られました。くらもちさんは盛岡から福島へと移動する電車の中で、石川さんは仙台で、千賀さんは東京で。

そしてそれぞれの人が「震災」を受けて、どんなことを考え、どんなアクションをしてきたか、という話になりました。
くらもちさんら「架空の劇団」の人たちが、被災地である岩手県沿岸に住む人々が震災直後に命をつなぐためにどんなものを食べていたのか、ということを取り上げた作品、『瓦礫と菓子パン〜リストランテ震災篇』を作って上演したこと。石川さんが主宰するTheatreGroupOCT/PASS”が、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンからの依頼で、劇団「夢とらっく〜結〜」を結成し、「セロ弾きのゴーシュ」を岩手県〜宮城県沿岸部で巡回公演したこと、そしてその後、宮沢賢治の作品を石川さんが構成した作品「人や銀河や修羅や海胆は」を県内10か所で巡演したこと。千賀さんが大震災の状況に敗戦後を想起し、空襲下も東京にとどまった坂口安吾が書いた小説「白痴」を朗読して全国を回ったこと。

3人が「震災」という同じ言葉を使いつつも、別々の経験をしていること、そしてそれぞれの距離感で「震災」を受けとめ、いろいろなことを想像し考え、新しいものをクリエーションしているということがとても印象的でした。

震災直後、自粛や不謹慎、という言葉が多く使われ、私自身も自分の想像が及ばない経験をした人に対してどう向き合ったらいいのか分らなくなり、クリエーションをするということ自体も揺らいだような気がしました。
けれども3人の話を聞いていて、ひとりひとりの震災を全て経験することなど出来ないし、震災を受けて「正しい」身の処し方、あり方などは無いのだなということを思いました。作品を見て感じることが様々であるように、様々に感じたことから自分なりのクリエーションをしていっていいのだな、と。私にとって「震災」は整理がつけられるものではなく、混乱させられるものでもありますが、それでもいいのだ、と肯定することができた気がします。

震災から9ヶ月以上たった今、震災への記憶がだんだんと薄まっていっている印象がありますが、自分が経験した「震災」に蓋をせず、人が発する声にも耳を傾け、どんなことがあったのか、想像し続けることをやめたくないと思いました。
あるくとサロンは答えを与えてくれる場ではありませんでしたが、こうした静かな思考へと自分を向かわせてくれる場で、貴重な時間を過ごせました。


伊藤照手

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